宿泊の予約をしている日の前日の夜中にストックホルムのホステルに到着して、ロビーに泊まらせてくれと言い張る中国人の旅行者の家族が、それを拒否したホテル側の通報を受けたスウェーデン警察によって排除されるという事件がありました。外国に家族旅行に出かけて夜中に泊まる場所が無くなるというのは、考えたくもないくらい恐ろしい話です。しかし、複数の報道を見ていくと、人道的な見地や社会常識に照らした場合に何が適切だったのか判断に苦しむ事件です。
報道
9月2日、スウェーデンのストックホルム市内で、現地警察の対応に不満を抱く中国人観光客3人が路上で泣いたり叫んだりなどして騒ぎを起こした。中国大使館は「人権無視」の猛批判を展開している。市の検察局長は、警察による無秩序な行為をする人物への対応とコメントを出している。中国から来た3人の親子は、予定時間より十数時間前に宿泊予定のホステルに入り、ロビーで就寝しようとした。ホステル側は追加料金を求めたが、3人は拒んだ。ホステルからの通報を受け、駆け付けた警察数人が3人を追い出した。(2018年09月18日 15時29分 THE EPOCH TIMES)
環球網によると、中国人の曽(ズン)さんと両親の3人は今月2日未明、ストックホルム市内の宿泊施設に到着した。チェックインが可能になるまでまだ時間があったため、両親の体調を心配してロビーの椅子で休憩したいと伝えたところ、「すぐに出て行け」と言われ、警察に通報されたという。
曽さんは警察官に両親が服用している薬について説明し、両親だけでもホテルのロビーに留まらせてほしいと訴えた。だが警察官は曽さんの父親を椅子の上から抱えあげてホテルの外に放り投げるなどし、最終的には3人を警察車両に載せ、数十キロ離れた墓地に置き捨てにしたという。(中国人観光客にスウェーデン警察がひどい扱い、墓地に置き捨てにする―中国メディア 2018年9月16日(日) 12時20分 Record China)
中国人旅行者の演技
中国人旅行者は警察から暴力的な扱いを受けたと主張していますが、動画を見ると、演技しているようにしか見えません。確かに父親を女性警官二人で抱えてホステルの外に連れ出していますが、一部の報道のように放り投げたわけではなく、そっと地面に下ろしています。
Chinese tourists claim mistreatment by Swedish police
パトカーから下ろされた場所について
数十キロ離れた墓地にほっぽり出されたとも書かれている一方で、暖房や照明のある地下鉄の駅近くで下ろされたのだから駅構内で一晩過ごせばよかっただけという掲示板の書き込みもあります。
Here is where they were dropped off with their luggage you can recognize it if you look around. It’s a 10 minute drive from the hotel, not an hour. The picture was taken 150 meter from a subway station that was open all night. The station is well lit and heated, you don’t need a ticket to go inside. (Reddit.com)
Yes this is also has a cemetery but there is also a subway station there. Of course this is not mentioned in the People’s Daily or Global Times. (Reddit.com)
Since the police couldn’t really arrest them or lock them up, they just transported them away from the hotel a bit to the south and left them at a tram station next to “Skogskyrkogården”. A lot of chinese people are furious at the disrespect of leaving someone close to a graveyard (which is a very taboo ridden place in Chinese culture). Of course the Swedish officers don’t know anything about that. (Reddit.com)
シノフォビア(中国嫌悪)
中国政府は、人種差別だとして憤っていますが実際のところ真相はどうだったのでしょうか?
スウェーデンのテレビ番組を見ると(Sinophobia is not ok (English subtitles) YOUTUBE)、スウェーデンにおける中国人の見られ方がよくわかります。
中国人旅行者のマナーの悪さはスウェーデンにおいて十分認識されているようで、下の動画(8:29~)は、マナーをわきまえた中国人旅行者は歓迎するが、そうでない中国人はお断りという強烈の皮肉を込めた旅行案内のパロディになっています。スウェーデンでは犬を連れて歩いている人がいるが、それは犬を食べるためではないとか、歴史的な建造物のそばで旅行者は糞(フン)をしてはいけないとか。スウェーデンには黒人、ユダヤ人、アラブ人、同性愛の人間が存在する。全ての人間は等しい権利を持つという原則に従うが、中国人にだけはその原則は適用されないと言い放つなど、中国人や中国政府に対する露骨な嫌悪感、常識が通じない中国人を差別するのは当然という態度が顕わにしていることには、びっくり仰天です。
ちなみにこの番組は、スウェーデンの公共放送だそう。
Sveriges Television (SVT) is the Swedish public service television company with the widest range of programming of all TV companies in Sweden. (About SVT)
当然、中国政府はカンカンに怒ってスウェーデンに抗議していますが、スウェーデン側は意に介する様子がありません。ニューヨークタイムズにこの番組が引き起こした騒動に関する詳しい記事があります。
Tension between China and Sweden over the treatment of a family of tourists in Stockholm has escalated after a satirical skit depicted Chinese travelers as people who eat dogs and need to be told not to defecate in public. (Swedish Skit Mocks Chinese Tourists, Drawing Backlash in China. By Austin Ramzy Sept. 26, 2018 The New York Times)
参考
- Sinophobia is not ok (English subtitles) YOUTUBE
- Maltreatment of Chinese tourists in Sweden sparks heated online debate YOUTUBE 中国人識者のコメント
- 「中国人観光客ホテルトラブル」スウェーデン側に欧米人の優越意識?謝罪でもからかい (JCASTテレビウォッチ モーニングショー 2018/10/ 5 15:37)スウェーデンのホテルに深夜にやってきて、宿泊を断られるとロビーで寝ようとしてつまみ出された中国人観光客の映像が中国で大騒ぎとなり、それをスウェーデンの公共放送がからかってさらにこじれ、公共放送側は先月28日(2018年9月)に謝罪したが、これがまた新たな火種になっている。「この謝罪は中国国民に対してであり、言論の自由を尊重しない中国政府に対してではありません」と再び挑発したためだ。
- 中国人がスウェーデンで「侮辱」受けた事件の真相、中国メディアの3つの過ち―米華字メディア(Record china 2018年9月19日(水) 12時10分)2018年9月18日、米華字メディア・多維新聞は、中国人観光客がスウェーデンでホテルや警察官とトラブルを起こしたことについて、中国の政府系メディアが世論のミスリードを招く偏向報道を行っていたと批判する記事を掲載した。
- 世界で嫌われる中国の極悪マナー「エエかげんにせんか!!」 vol.2(2013年1月4日 7時0分 日刊大衆 livedoorNEWS)中国国家観光局が12年初頭に「海外旅行でよく見かけるマナー違反」の項目を公表している。その中身を見ると、前述した「タンを吐く」など以外で上位に挙がっているのは、「注文していないのにレストランを占拠する」「飛行機の遅延に抗議して飛行機を降りない」「大衆の前でも平気で上半身裸になる」といった調子なのだ。「いまや世界中で、中国人はゴキブリ並みに嫌われています。”中国嫌悪”を意味する”Sinophobia”という英語の新語までできるほどです」(通信社ベテラン記者)